画鬼庵

画禅庵と同一敷地内にあり鐵心が最初のアトリエとして昭和60年に建設した数寄屋風木造建築です。鐵心建築の原点ともいえる建物です。


鐵心建築徒然草

鬼瓦

 

大っきい声じゃいえんけぇが、

熱が三十九度も出ちまった。

ちいっと熱、入れて粘土こねたのがいけなんだ。

こんなに出たなぁー十年ぶりぐらいづら。

 

「棟梁、屋根に鬼を載せたいが」

「面白いなー。そんじゃ瓦屋呼ぶか」

「わしも解らんで元からおんなし土とってやるよ」と瓦屋さん

「よく素人さんが・・・」だって、

知らんなー。素人の腕前を。

 

粘土が来た。

乾くと困るので日に三面

朝の五時から夜十時

翌日も頑張った。

次の日から雨ばっか。

粘土・乾かず、俺の熱出たよ。

 

ゆっくり、ゆーっくり、干す。

日影でじっくりと。

白くなったら日なただ。

炉に入れる。

どーか割れませんよーにと

 

さぁーどうだ。

素人さんが作った鬼だで。

何でも始めは素人さん。

俺、買ってもらうわけじゃないで、

屋根に載ってりゃいいの。

 

鬼瓦も作る人が出るという。

俺、熱が出た。

鐵心 合掌

 


階段

「丸太半割りの作ってよ」

「うーん」しぶい顔の棟梁

「並べて、バンバンと止めちゃやーいいで」

「そんでも人が上がるで」

「たくさん釘打ちゃいいら」

「そんな仕事できんよ」

「・・・・・・・・・」

「まぁ、なんとかやってみらぁ半丸で」

「うまく出来たら花丸だ」

「うまいこと言って」

「あは・・・」

「勉強させられらぁ、あんたん家は」

「値段も勉強してよ」

「あはは・・・・。こけるようなこと言うよ」

「階段はこけんでよ」

 

やっぱし頼んでよかった。

けっこくできた。

びくともせんし。

合掌          鐵心

 


垂木

「こんな木でいいだかやー」

「おっ、そう、そう」三度目の見本。

なんのこったぁない〈足場丸太〉だって。

「今まで使ったこたぁないなー、こんなの」

早くせんと間伐材まとまらんよ」

山に捨ててあるって聞いたのに?

「仕事しにくいなー」と

「三流の材料、一流の腕でやってよ」

と載せる。

「料理で言やぁ、おふくろの味だな」

「手作りだね」

「高くつくかも知れんなー」

 

そんでもいい。木をそのまま生かしたい。

皮がついていたっていい。

けっこいより、丈夫がいい。

節もいい。たのむよ棟梁

 

合掌          鐵心

 

夫婦大黒

 

太い木が好きだ。

十年、二十年じゃ出来ん。

一番大事は時が浸みこんでるやつだ。

ひとかかえ位のやつだ。

 

製材に行く。

ケヤキの丸がある。ちーっと物足りん。

椎の太いのなら山にあると。まだ生っ木。

「ほんじゃ、あっちに桧が一本あらぁ」

「二年位置いて虫にはいったな」

「料理屋の板にせっかと思ってた」

「あんでよけりゃ―」

ぼそっ、ぼそっ、と話す。

「尺五寸位あるら」

 

自転車で走った。なーる程、でっかい節。

虫跡もある。太いだけがとりえだ。

俺が使わにゃ、お前はまな板だってよ。

よーし決めた。百年の木のエネルギーが俺を引く。

 

「棟梁これ」

「がんこだなー」

「向きは、こっちだな」

「節はかくさんだかやー」

「節のない木はないさ」

「長いなー」

「二本とって、夫婦大黒」

「なーる程」

合掌          鐵心