画学六法

 水墨画を学習するにあたって、本来なら絵画は好きなように伸び伸び描けばよいのかもしれませんが、こと水墨画に関しては写生から入門しても被写体に濃淡があるわけでなし、線の質が変化して見えるわけでもありません。このために、用筆法・用墨法についてしっかりと学ぶ必要があります。この用墨法・用筆法は本で読んだり聞いたりする知恵だけでは自分のものにならず、何度も繰り返し練習して体得しなければなりません。これが大切な基本となります。基本というのは一本の道かと思います。昔の東海道も日本ができたときからあったわけではなく、江戸から大阪に行くのに少しでも安全で早く到着するように、大勢の人の体験によってできたものとでしょう。

 水墨画も四君子(竹・蘭・菊・梅)の基本となる練習方法が初めからあったのではなく、多くの画人がっ少しずつ工夫したものがまとめられて、初心者が早く的確に体得できるようになったものです。

 昔から以下の画学六法というものがあり、

  1. 気韻生動
  2. 骨法用筆
  3. 応物象形
  4. 隋類賦彩
  5. 経営位置
  6. 伝模移写

この1~6を説明しますと、およそ次のようになります。

 気韻生動とは感情・感動表現の方法。骨法用筆は用筆法。応物象形は写生について、隋類賦彩は着色のことですが、水墨画では用墨法でよいと思います。経営位置は構図、伝模移写は先人の画を模写することをいいます。

                        合掌           鐵心

NHK学園 水墨画必携より

水墨と柿の実

 せっかく水墨画を始めたのだから早く自分んもそれなりに認められたいと思うものです。

 習い事の中には遊び的要素の多いものと芸術性が高いものとあるように思われます。丁度、植物の中でも草類と木類との違いのあるように、遊び的要素の多いものはナスやトマトのように半年足らずで実を付けますが、木の中でも柿などは七、八年経たなければ実を結んでくれません。

 水墨画の場合はこの柿よりももっと長く、もし種から育てるとすると三十年は掛ると思います。

 私は淡南先生の台木に接木していただいたために二十年くらいで何とか身を付けさせていただきました。しかし年配の方はあまりのんびりしたことも言ってられないと思いますので、(先を急がせるわけではありませんが・・・)私なりに新しい接木の方法を研究して、一年でも早く身を成らすことができるように努めています。

 どうか皆さんは基礎となる根を土中に張っていただきたいと思います。普段の勉強は肥料です。実がなりそうになってから急に肥料をたくさんやり過ぎると枯れてしまいます。実が成ったら友人や家族の方に分けてあげることができます。

 半年、一年でできるものは逆に他人でも簡単にできることなのでいただいても感謝の気持ちも薄いものですが、やはり長年積み重ねたものには一筆にも重みがあります。

 人の一番大切なものは生命、生命とは時間の積み重ねの大きいもの程価値あるものと判断してもよいのではないかと思います。

                                          合掌          鐵心

東洋水墨美術協会  私たちの水墨画作品集より